クラタタカシのブログ

この文章に意味はありません

大きな石をめくる。

今日も便座の上からお送りしております。
熱は下がりきったのに下痢が治る気配がない、もう一生このままなのかも知れません。なんて可哀想なアラサー独身男性。
明日もどうせ出社できなそうなので、どうせ暇な今のうちにブログ書いてしまおうという浅はかな作戦でやって参ります。

一般的に、人は得体の知れないものに対して恐怖を抱くそうです。
暗闇が怖いのは視覚から得られる情報が少なく、数秒後の事態が予想できないから。
名前や知識のない病気や動物が怖いのは、そのリスクを測りかねるから。
確かに仮にゾンビが発生したとしても、捕獲されて伝染性がなかったり、加虐性がないことが判れば怖いとは感じないと思います。
更に知性があれば、少し腐敗臭のする隣人として付き合っていけるかも知れません。夏場の付き合いを避ければ問題ない点は太った人と一緒です。

人見知りの人も、基本的には同じ心理かも知れませんね。
人に限らず、得体の知れないものに人一倍恐怖を感じるのかも知れません。
こういう人は、良くも悪くも人を客観的に分析することに長けているように感じます。
仲良くなって後々話してみると、「最初は胡散臭い人かと思ってました、笑顔が偽物です」とか言い始めるんです。サイコパス系の小説だったら、残念ながら序盤で死ぬでしょう。「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」というやつです。


先日はクソポエムを投稿したので、今日は久しぶりに好みの小説の紹介をしようと思います。
貫井徳郎という方の、「微笑む人」という作品です。



所謂サイコパスものですね。
ただ書き方が珍しく、主人公で小説家である「私」が、ある事件をノンフィクションにまとめた、調査や聞き取りのルポ形式で話が進んでいきます。


サイコパスが躍動するサイコスリラーだと、貴志祐介さんの「悪の教典」が有名だと思います。社会的に高い評価を得ていた教師が、実はサイコパスかつシリアルキラーで、自分の計画が狂った挙句、導き出した最適解が自分のクラスの生徒を全員殺すことで、その一部始終を描いた映画は当時結構ショッキングな内容だった記憶があります。


悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典〈上〉 (文春文庫)

悪の教典

悪の教典


伊藤英明さんもはまり役でした。
ご飯時以外に見ることをお勧めします、グロがだめな人も止めたほうがいいですね。後半の殺戮シーンよりも、前半のボロが出始めたときの得体の知れなさの方が不気味で面白いです。
人見知りのところで話した、勘のいいガキや同僚の教師もしっかりと殺されてます。


話を戻します。
今回紹介する「微笑む人」はこういうサイコスリラーな感じではありません。
過激な描写はありませんし、そもそも犯人は快楽殺人者ではないので不必要に人が死ぬことはありません。

発生した事件の犯人の供述に興味を持ち、小説家である「私」は事件の全貌と犯人である仁藤俊実のバックグラウンドを探っていくという形式です。
読者としては、この「私」を作者の貫井徳郎さんだと思えば物語に入り込めると思います。

まず、事件の概要はこんな感じです。昔読んだ記憶を頼りに書いているので、かなり適当ですが。


神奈川県のある河川で水難事故が発生。
溺れたのは3歳の少女とその母。父親もその場におり、救護にあたったが救急隊員が現場についたときにはすでに心肺停止状態にあり、病院で両名の死亡が確認された。

当初は単なる痛ましい水難事故として認識されていたが、後に近隣からの目撃証言で父親が妻子を意図的に溺死させたことがわかった。


この父親が仁藤俊実です。


当初は目撃情報が出ているという警察に対して容疑を否認していたが、妻の爪から殺害時に引っ掻いたと思われる犯人の肉片が検出され、仁藤のDNAと一致。これが決め手となり、仁藤は犯行を認めた。


問題は、犯行動機とその供述です。


「本が増えて家が手狭になったから、妻子を殺した」
「妻子がいなくなればその分部屋が空き、本が置けるようになると考えた」


わあ、サイコパス
不気味なまでの共感の出来なさ、だからこそ興味を持ってしまう「私」の気持ちは理解できますし、この本を手に取る人もその一人でしょう。

つまり、仁藤俊実にとって人を殺すことのハードルは古い家具を捨てるのと同じくらいに低かった、ということです。
ちなみにタイトルは、仁藤俊実が所謂社会的エリートでいつでも理知的で紳士的に振舞う人だったから、ということに由来しています。


木の根っこ付近にある大きな石をめくったことがありますか。
一見綺麗な場所でも、その石の下には夥しい数の虫や蛆がいたりします。
そういう怖いもの見たさで、是非暇な時にでもこの本を読んでみてください。
この事件以外にも、彼の過去を追う内に明らかになるその異常性、不可思議な事故等、「私」と一緒に沢山の石をめくることになります。


思ったより記憶から抜けていて長くなってしまいました。もうド深夜ですね…。
今度は意味のないブログを書くぞー。超お腹痛いー。