緩く続く不安。
こんばんは、会社帰りにブログを書けば家まであっという間だということに気付きました。
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)
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【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)
- 作者: 乾緑郎
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植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。少女漫画家の淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と対話を続ける。「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。弟の記憶を探るうち、淳美の周囲で不可思議な出来事が起こり――。
自殺未遂を起こして植物状態となった弟と最先端の医療器具を通じてコミュニケーションを取っている姉が主人公です。
少女漫画家として打ち切りが決まった作品の連載を続けながら、弟の治療を続けます。
弟の自殺の原因を探るため「センシング」という方法で、意識下での弟とのコミュニケーションを図りますが、意識の中でさえ弟は目の前で自殺を繰り返します。毎回その繰り返し。
段々、その中で「センシング」と「現実」の区別がつかなくなっていきます。
現実に意識不明のはずの弟が出てきたり、センシングから連続で目覚めたり。
小説の中で何度も出てくるワードが、『胡蝶の夢』です。
荘子の説話で、蝶になった夢を見ている人がいる、その人が目覚めたとき、もしかしたら今の自分は蝶が人になった夢を見ているのかも知れない、と考えるという内容です。
つまり、どちらが夢なのかわからなくなる、どちらが現実なのかわからなくなるということです。
主人公は、自分がどうかしてしまったのではないかと自分を疑い始めます。
ネタバレになるので、詳細はやはり書けませんが、センシング内では「弟の自殺」、現実では「漫画家としての苦悩」が淳美をジワジワと追い詰めます。前述しませんでしたが、元担当者との男女の関係というのも重い過去として彼女の中にあり続けます。
そのストレスで段々と彼女が壊れていくのが書かれていると感じますが、最後にはしっかりと解決の答えを用意してくれています。
そう思ったラスト数ページ、またわからなくなってこの小説は終わります。
久しぶりに読みましたが、結局なんやねん……となるこの感じ。
救いがあり、答えもあるのですが、その救いと答えすら本当にあるのかはわからない。
どうしようもない、新宿あたりで居酒屋のキャッチと酔っ払った大学生が繰り広げる会話くらい破滅的でどうしようもない展開です。
※賞を取るくらいですから、非常によく出来た小説ですよ
鬱々としたい気分の時に是非読んでいただきたい。
もしお近くに笑顔を奪いたいあの子がいるのなら、是非プレゼントしてあげてください。
ハートフルな夢より、ハードでストレスフルな現実をくれてやりましょう。
普通に面白い小説ですので、読んでみてください。
それでは今月も経済活動していきましょう。