クラタタカシのブログ

この文章に意味はありません

緩く続く不安。

こんばんは、会社帰りにブログを書けば家まであっという間だということに気付きました。

今までただ白目を剥いてよだれを垂らしながら帰宅していましたが、これからは有意義な帰り道を過ごせます。
 
今日は夏日でしたね、参りました。
おじさんがより一層臭い立つ季節がまたやって来てしまったのです。
僕は昔からおじさんにはならないと信じていましたが、年齢的にも体力的にも今や立派な、おじさんです。
飲み屋に行けばウーロンハイしか飲みませんし、最新のJ-POPを聞けば苦い顔をします。NHKのプロフェッショナルを好んで視聴し、好きな芸能人が高校から更新されていません。自分の言ったギャグに自分が一番笑い、脂を摂取すれば則胃もたれ腹痛。
この現実を受け入れなければなりません。
 
「このミス」という賞をご存知でしょうか。
最近はあまり買わなくなりましたが、昔は結構読み応えのあるものが出ていました。
最近のものは題名が携帯小説っぽくて読む気になれないものが多く、この拒否反応が如何にもおじさんだなと感じる日々です。
有名どころだと、チーム・バチスタの栄光でしょうか。
ドラマ化、映画化もされ、今では人気シリーズとなっています。
 
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)

 

 

先程現実を直視しなければならないと書きましたが、今回紹介するのは現実と夢が曖昧になる小説です。
同じく第9回このミスを受賞しており、映画化もされました。
 
【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)

【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)

 

 

原作が好きだったので、映画も見たのですが全然ストーリーが違くて途中で飽きてしまった覚えがあります。
無駄に首長竜のクオリティが高くて、アクション系の作品。
僕が見たかったのは、全くそんなものじゃありません。
というか原作は首長竜関係ありません。単なる作品中のキーワードというか、象徴として出てくるだけです。
カントリーマアムを開けてみたら、袋の中に田舎のお母さんが入っていたような衝撃を映画館で受けましたよ、まったく。
 
僕は憂鬱で、現実感がなくて、真相にたどり着けそうで着けない、緩く続く地獄みたいな作品が見たかったのです。
人間性が疑われますね、やめましょう。
 
佐藤健綾瀬はるかの時点で、作品で勝負する気はないなというのはわかりましたがそれにしても本質を見失い過ぎでした。カイジと咲くらい違います。嶺上開花が一役だけっておかしくないですか。
 
話はまた、小説に戻ります。
概要はこうです。
 

植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。少女漫画家の淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と対話を続ける。「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。弟の記憶を探るうち、淳美の周囲で不可思議な出来事が起こり――。 

 

自殺未遂を起こして植物状態となった弟と最先端の医療器具を通じてコミュニケーションを取っている姉が主人公です。

少女漫画家として打ち切りが決まった作品の連載を続けながら、弟の治療を続けます。

弟の自殺の原因を探るため「センシング」という方法で、意識下での弟とのコミュニケーションを図りますが、意識の中でさえ弟は目の前で自殺を繰り返します。毎回その繰り返し。

段々、その中で「センシング」と「現実」の区別がつかなくなっていきます。

現実に意識不明のはずの弟が出てきたり、センシングから連続で目覚めたり。

 

小説の中で何度も出てくるワードが、『胡蝶の夢』です。

荘子の説話で、蝶になった夢を見ている人がいる、その人が目覚めたとき、もしかしたら今の自分は蝶が人になった夢を見ているのかも知れない、と考えるという内容です。

つまり、どちらが夢なのかわからなくなる、どちらが現実なのかわからなくなるということです。

主人公は、自分がどうかしてしまったのではないかと自分を疑い始めます。

 

ネタバレになるので、詳細はやはり書けませんが、センシング内では「弟の自殺」、現実では「漫画家としての苦悩」が淳美をジワジワと追い詰めます。前述しませんでしたが、元担当者との男女の関係というのも重い過去として彼女の中にあり続けます。

そのストレスで段々と彼女が壊れていくのが書かれていると感じますが、最後にはしっかりと解決の答えを用意してくれています。

そう思ったラスト数ページ、またわからなくなってこの小説は終わります。

 

久しぶりに読みましたが、結局なんやねん……となるこの感じ。

救いがあり、答えもあるのですが、その救いと答えすら本当にあるのかはわからない。

どうしようもない、新宿あたりで居酒屋のキャッチと酔っ払った大学生が繰り広げる会話くらい破滅的でどうしようもない展開です。

※賞を取るくらいですから、非常によく出来た小説ですよ

 

鬱々としたい気分の時に是非読んでいただきたい。

もしお近くに笑顔を奪いたいあの子がいるのなら、是非プレゼントしてあげてください。

ハートフルな夢より、ハードでストレスフルな現実をくれてやりましょう。

 

普通に面白い小説ですので、読んでみてください。

それでは今月も経済活動していきましょう。